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震災の地に地域ロービジョンの活動拠点

「兎渡路の家」について

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福島県いわき市 木村眼科クリニック

院長  木村 肇二郎 

公益社団法人 日本眼科医会

「日本の眼科」94:10号(2023年)別刷(2023.10.20発行)

「NEWS&TOPICS 今月の一話」掲載

1. はじめに

 木村眼科クリニックが所在する福島県いわき市は人口33万人、仙台に次いで東北では第2位の人口規模を誇る東北の拠点都市です。

 平成2年に慶應大学病院を退職後に、父親の眼科医院を継承する形でクリニックはオープンしました。無床診療所ですが、後輩の5名の大学教授や医師に助けられて年間約1000件以上の白内障手術と60件の硝子体手術を行っています。難病の患者さんが多数来院されることから、震災前にロービジョン外来を開設すると共にボランティアグループを立ち上げて視覚障がい者への支援を実践しました。

 震災時にはクリニック病床を開放して視覚障がいの方々の避難所としても使用しました。開院30年を機に、2021年に東日本大震災で津波被害にあった豊間海岸兎渡路に視覚障がい者の地域活動の拠点となる施設を建設しました。

2. 地域ロービジョンの「拠点」として

兎渡路の家の概要

住所 福島県いわき市平豊間兎渡路370-8

敷地面積1054平方メートル、建物面積52坪

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 2021年1月のオープニングでは地元の彫刻家の力を借りて視覚障がい者も楽しめる「触れる彫刻展」を開催しました。コロナ禍ではありましたが、延べ400名の方にご来館いただきました。現在は視覚障がいの方のためのヨガクラスや、パソコン倶楽部、コンサート、講演会、タンデムサイクル体験、木工ワークショップ、音声ガイド付き映画上映会などを主催すると共に、私のポリシーである脱原発や護憲活動の勉強会を開催したり、地域貢献として、ビーチクリーン活動、福祉グループや環境問題、子どもの居場所づくり、動物福祉などに取り組むグループに無料で貸し出しています。

 妻である看護師兼社会福祉士の副院長や当院に事務局を置くボランティアグループ「ゆかり」のメンバーと共にロービジョン者への様々な活動を行う中で自分たちの「場所」が必要と感じて建設を決意しました。

 次に場所探しが始まりましたが、ちょうど津波被害に遭った豊間地区の復興工事が進んでいることがわかりました。この場所は以前私が慢性硬膜下血腫で入院加療をした国立病院があった思い出深いところでしたので、恩返しの意味も込めて建設することにしました。建設にあたっては、設計士と大工さんと一緒にいくつかの先行事例を見学して、視覚障がいの方々が使いやすい施設を心がけました。

 特に力を入れてつくり好評なのが入り口すぐに設置したトイレです。そのほか機能性だけでなく、デザイン性にもこだわりながら薪ストーブ2台を設置して、やすらげる空間づくりのために家具やディスプレイも細かく考えたこともご好評をいただいております。

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3.ネットワーク

この原稿を書いている前日に大きなイベントがありました。職員旅行で出かけた鎌倉で出会っ「サーフィンを通してあらゆる障壁を取り払い、インクルーシブな社会をつくる」ことをミッションに掲げる一般社団法人サーファーズケアコミュニティ Nami-nicationsの方々に豊間海岸においでいただきコラボレーションでパラサーフィンイベントを開催しました。前夜祭含め延べ130名の方々が兎渡路の家に集いました。視覚障がいの方はもちろん、車椅子ユーザーィ、重症心身障がい児とそのきょうだいなどが多くのサポートを得てサーフィンや海水浴を安全に楽しみました。サポーターの中には救命救急医か看護師、理学療法士の他に、横須賀で開業されている澤崎先生、山梨で開業されている大野先生のお姿もありました。施設を建設したことで様々な地域の課題への取り組みが始まっています。

​ 現在83歳ですが、これからも力の続く限り妻と楽しみながら地域貢献を続けていきたいと思っております。

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